プレスリリース

日経産業新聞「郵政改革、秒読み段階−米ピツニーボウズ 郵便に革命『次は日本』」

2003年の郵政三事業の公社化と郵便サービスの民間開放を柱とする日本郵政公社(仮称)の設置法案が今週から開会した通常国会に提出される見通しだ。秒読み段階に入った日本の郵便改革を虎視たんたんと狙う米国企業がある。世界の郵便機器市場で6割強のシェアを握る米ピツニーボウズ。ネットを活用した郵便物の追跡システムなど最先端技術で世界の郵便を変えてきた同社の目に、独占に慣れた日本の郵便事業は変革への宝庫と映る。

安全性でも注目
 「郵政事業庁と郵便利用者、民間企業が協力して新しい郵便システムを構築すべきだ」。
 昨年11月、都内のホテルでピツニーボウズの日本法人、ピツニーボウズジャパン(東京・品川、飯田裕社長)が開いたセミナー。米コネティカット州の本社から駆けつけたマイケル・クリテリ会長兼最高経営責任者(CEO)は郵政事業庁の職員やメール代行業者など約百人の聴衆を前にこう訴えかけた。
 クリテリCEOとともに米本社からは二人の上級副社長も来日した。セミナーと前後して、郵政事業庁やシステム会社などを訪れ、同社技術を売り込む狙いがあった。郵政公社化と郵便事業の民間開放という日本での商機に意欲を強めるピツニーボウズ。その歴史は米国の郵便事業の変革の歴史でもある。
 同社の起源は1901年、創業者の一人である発明家、アーサー・ピツニー氏が郵便料金計器の特許を申請したことにさかのぼる。同社が扱う郵便料金計器は発送する郵便物に切手の代わりに特定の印影を印刷する装置。いちいち切手を貼る手間が省ける同装置の登場は多種多様な大きさの郵便物を発送する企業の合理化に大きく貢献した。
 同計器では米国のほか、豪州などで最大手。90年代以降の情報技術(IT)の発展に伴い、急速な技術革新を進めてきた。
 各企業が保有する郵便料金計器のメーターをインターネットで読みとり、料金を決済するシステムのほか、ネットから"電子切手"をダウンロード、プリンターを使って封筒などに印刷することでそのまま切手として活用できる「クリックスタンプ・オンライン」など様々なシステムを実用化した。
 99年には「インテリリンク」と名付けたシステムを構築。米郵政公社と提携し、ネットを介して料金支払いや配達確認などができるシステムを導入した。二次元コードを利用して特殊なデジタル暗号を封筒に印刷、郵便物が配送ルートのどこにあるかを逐次把握でき、受取人が封筒の発送者や発送時刻を知ることもできる。
 昨秋、米国で相次ぎ発生した炭疽(たんそ)菌混入事件で、郵便物の安全性を確保できる同システムへの注目が高まっているという。

遅れた日本開拓
 二年前からは郵便事業のさらなる効率化に向け、技術標準化などを協議する「郵便産業タスクフォース」を米郵政公社と共同主催している。年間売上で600億ドルを超す米郵政公社の技術革新を実質的に支えるのがピツニーボウズだ。
 郵便や文書管理を中心に3400件を超す特許を保有する。ニューヨーク証券取引所に上場する同社の2000年12月期の売上は38億8千万ドル、純利益は6億2200万ドル。技術独占をテコに売上高純利益率で16%という高収益を誇る。
 そんなピツニーボウズの日本での売上高は約40億円と、全体の1%に過ぎない。ピツニーボウズジャパンの大新田納マーケティング部長は「日本特有の郵便制度が色濃く残っているため」と指摘する。
 日本で郵便料金計器の使用が認可されたのは1952年。しかし、年間で約220億通に上る日本の郵便物のうち、郵便料金計器を使って送られるのは5%程度にとどまる。計器のメーター部分を郵便局に持ち込んで料金を精算するため、手間がかかり普及が進んでいない。
 代わりに日本で一般的となったのが一カ月分の郵便料金を翌月にまとめて支払う「後納」制度。企業側で送出する郵便物の重量などをチェックしておき、実質的な自己申告制で料金を支払う仕組み。2000年度の後納郵便量は全体の44%を占めた。
 ただ、来年からの民間への事業開放もあり、サービス向上に向けた競争の本格化は必至。新郵政公社が手をこまぬけば、新技術を取り入れた民間事業者に市場を奪われる可能性も出てくる。「新規参入者も郵政事業庁も、我々のシステムを活用しようと思うはず」。ピツニーボウズのクリテリCEOは自信を見せる。
 すでに英米の二カ所にある同社の研究所から開発者が相次ぎ来日、市場調査を始めている。現在の後納制度の料金納付をインターネットや電話回線を介して簡易化するシステムなどを当面のターゲットに据える。

2番手も追撃
 日本の郵便改革に商機をにらむのはピツニーボウズだけではない。スイス企業の日本法人で国内二位のアスコムハスラー(東京・板橋、佐々木恭男社長)も「郵政事業庁、郵政事業に参入したい民間企業の双方と提携したい」(佐々木社長)としている。スイスの親会社は今春にもフランスの同業者、ネオポストに郵便機器部門を売却することを決めており、アスコムはネオポストとの連合でピツニーボウズ追撃をめざす。
 80年代から本格化した通信事業の自由化は技術確信を促し、巨大な機器、システム市場を生み出した。来年からの郵便自由化がどんな市場を生み出すのか。水面下での戦いがすでに始まっている。

2002年1月23日

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